苦闘の先に、開眼あり
千野 直孝(ちの なおたか)さん
麻布中高・京大工学部卒、現在東大大学院・工学博士

京大入学後、学内の書店でふと目にとまった一冊の本。ぺージをめくってみると、やっぱりあの時の本でした。小六のKGC時代、Y先生が「これ、少し読んでみない」と言って紹介してくれた外山滋比古著「読書の方法」。子供向けというより一般向けなので易しい内容ではないのですが、引き込まれるように読み進んでいった当時の記憶が甦りました。実は、その時を境に、「国語が苦手」から脱却。「本を読む」「文章を読む」ことにアクティブになれたからだと思います。以来、入試も含め中学高校大学と国語でギクシャクということはなかったです。一種の『開眼』だったのかもしれませんね(笑)。
化学工学の研究生活でもそうした『開眼』が重要にポイントになってきます。私の専門は、表面・界面科学。主に、微細空間に閉じ込められた分子と表面の界面制御により、新しい機能を発現させる研究を行っています。例えば、色の変化を利用したセンサーやガス貯蔵材料の開発など。ガス貯蔵材料とは、燃料電池に代表される将来の水素エネルギー社会を担うであろう水素貯蔵材料のことで、世界が競って開発している技術の一つです。先端分野では、数千のアイデアがあっても、ものにできるのはせいぜい2つか3つ。いかにアイデアを結実させ、ものにするか。もやもやした混沌の中から、何か1つのきっかけを得て、新しい物質・機能の誕生へとこぎつけた時、感じるのが『開眼』という感覚。しかし、それまでのプロセスは失敗と格闘の連続。結局は自分とのたたかい。最後は根性がものをいうのが、研究・開発の世界だとつくづく思います。
「決してあきらめない。あきらめてはいけないという研究者にとっての根本。私の場合、あの中学受験に向けてのチャレンジで培われ、今も確かな支えとなっています。
[ 2006-03-01 ]


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